ユーザー エージェント(UA)文字列削減は、パッシブ フィンガープリントに使用される可能性がある、ユーザー エージェント文字列で共有される個人識別情報を最小限に抑えます。これらの変更が一般提供にロールアウトされたため、すべてのリソース リクエストの User-Agent
ヘッダーが削減されました。その結果、navigator.userAgent
、navigator.appVersion
、navigator.platform
などの特定の Navigator
インターフェースから返される値の情報量が削減されます。
ウェブ デベロッパーは、サイトのコードの中で User-Agent 文字列の使用に関係する部分を確認する必要があります。User-Agent 文字列を解析することでデバイスのモデル、プラットフォームのバージョン、ブラウザのフルバージョンの情報を取得しているサイトの場合は、User-Agent Client Hints API の実装が必要になります。
User-Agent Client Hints(UA-CH)
User-Agent Client Hints を使用すると、User-Agent のすべてのデータを利用できます。ただし、サーバーが特定のデータに対する明確な必要性を能動的に宣言した場合に限ります。
受動的に開示されるユーザーデータを削除することで、リクエスト ヘッダーや JavaScript API などのメカニズムによって意図的に開示される情報の量を、より適切に調整し削減できます。
UA の情報量削減と UA-CH が必要な理由
これまで、User-Agent 文字列は、HTTP リクエストごとに、ユーザーのブラウザ、オペレーティング システム、バージョンを示す大きな文字列データをブロードキャストしていました。これには 2 つの問題がありました。
- データが詳細かつ豊富であることから、ユーザーが特定される可能性がある。
- この情報がデフォルトで利用可能であることから、密かなトラッキングが行われる可能性がある。
UA と UA-CH の削減により、デフォルトで基本的な情報のみを共有することで、ユーザーのプライバシーが強化されます。
情報量削減後の User-Agent には、リクエストを送信したパソコンまたはモバイルのブラウザのブランドとメジャー バージョン、プラットフォームが含まれます。それ以外のデータを利用する場合は、User-Agent Client Hints を使用して、ユーザーのデバイスや状態に関する特定の情報をリクエストします。
また、時間の経過とともに User-Agent
文字列が長く複雑になり、文字列解析でエラーが発生しやすくなりました。UA-CH を使用すれば、構造化された信頼できるデータが提供され、解釈が容易になります。UA 文字列解析のための既存のコードがエラーになることはないはずですが、返される情報量は少なくなります。特定のクライアント情報が必要なサイトの場合は、UA-CH への移行が必要になります。
情報量削減後の UA と UA-CH の機能
情報量削減後の UA と UA-CH がどのように機能するかについて、簡単な例を次に示します。より詳細な例については、User-Agent Client Hints によるユーザーのプライバシーとデベロッパー エクスペリエンスの改善をご覧ください。
ユーザーがブラウザを開き、アドレスバーに example.com
と入力します。
ブラウザがウェブページを読み込むためのリクエストを送信します。
- ブラウザは、情報量が削減された User-Agent 文字列を含む
User-Agent
ヘッダーを含めます。たとえば、User-Agent: Mozilla/5.0 (Linux; Android 10; K) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/98.0.0.0 Mobile Safari/537.36
です。 ブラウザは、デフォルトの User-Agent Client Hints ヘッダーにこれと同じ情報を含めます。次に例を示します。
Sec-CH-UA: "Chrome"; v="98" Sec-CH-UA-Mobile: ?1 Sec-CH-UA-Platform: "Android"
- ブラウザは、情報量が削減された User-Agent 文字列を含む
サーバーは、
Accept-CH
レスポンス ヘッダーを使用して、デバイスモデルなどの追加の Client Hints を送信するようブラウザにリクエストできます。たとえば、Accept-CH: Sec-CH-UA, Sec-CH-UA-Mobile, Sec-CH-UA-Platform, Sec-CH-UA-Model
です。ブラウザは、ポリシーとユーザー設定に照らして、その後のリクエスト ヘッダーでサーバーに返すことができるデータを決定します。次に例を示します。
Sec-CH-UA: "Chrome"; v="93" Sec-CH-UA-Mobile: ?1 Sec-CH-UA-Platform: "Android" Sec-CH-UA-Model: "Pixel 2"
重要な Client Hints
最初のリクエストで特定の Client Hints のセットが必要な場合は、Critical-CH
レスポンス ヘッダーを使用します。Critical-CH
の値は、Accept-CH
でリクエストされた値のサブセットである必要があります。
たとえば、最初のリクエストに Device-Memory
と Viewport-Width
に関するリクエストが含まれていたとします。ここでは、Device-Memory
が必要不可欠とします。
GET / HTTP/1.1
Host: example.com
HTTP/1.1 200 OK
Content-Type: text/html
Accept-CH: Device-Memory, Viewport-Width
Vary: Device-Memory, Viewport-Width
Critical-CH: Device-Memory
ウェブページを適切にレンダリングするためにブラウザに Critical Hints(Critical-CH
)が必要な場合、サーバーは Accept-CH
ヘッダーを使用してこの追加情報をリクエストできます。その後、ブラウザは、クリティカル ヒントを含むページの新しいリクエストを送信できます。
要約すると、Accept-CH
はページにあると望ましいすべての値をリクエストするのに対し、Critical-CH
はページを適切に読み込むために必要不可欠な一部の値のみをリクエストします。詳しくは、Client Hints の信頼性に関する仕様をご覧ください。
UA-CH API を使用してタブレット デバイスを検出する
モバイル デバイス、タブレット、パソコンの区別がなくなり、動的フォーム ファクタ(折りたたみ式画面、ノートパソコンとタブレット モードの切り替え)が一般的になるにつれて、レスポンシブ デザインと機能検出を使用して適切なユーザー インターフェースを表示することをおすすめします。
ただし、ブラウザから User-Agent 文字列と User-Agent Client Hints に提供される情報はどちらも同じソースから取得されるため、同じロジック形式が有効です。
たとえば、次のパターンが UA 文字列でチェックされるとします。
- スマートフォンのパターン:
'Android' + 'Chrome/[.0-9]* Mobile'
- タブレット パターン:
'Android' + 'Chrome/[.0-9]* (?!Mobile)'
一致するデフォルトの UA-CH ヘッダー インターフェースがチェック可能です。
- 電話のパターン:
Sec-CH-UA-Platform: "Android"
、Sec-CH-UA-Mobile: ?1
- タブレット パターン:
Sec-CH-UA-Platform: "Android"
、Sec-CH-UA-Mobile: ?0
または同等の JavaScript インターフェースも考えられます。
- スマートフォンのパターン:
navigator.userAgentData.platform === 'Android' && navigator.userAgentData.mobile === true
- タブレット パターン:
navigator.userAgentData.platform === 'Android' && navigator.userAgentData.mobile === false
ハードウェア固有のユースケースでは、高エントロピーの Sec-CH-UA-Model
ヒントを介してデバイスモデル名をリクエストできます。
情報量削減後の UA の使用方法とテスト方法
まず、サイトのコードを調べて、User-Agent 文字列のインスタンスと使用を確認します。User-Agent 文字列を解析することでデバイスのモデル、プラットフォームのバージョン、ブラウザのフルバージョンの情報を取得しているサイトの場合は、UA-CH API を実装する必要があります。
UA-CH API に更新したら、User-Agent から想定どおりのデータが得られることを確認するためのテストを行います。テスト方法は 3 つありますが、いずれもこれまでより複雑です。
情報量削減後の User-Agent が大規模に利用可能になるのは、完全に情報量が削減された UA 文字列がすべての Chrome デバイスで提供されるようになるときです。情報量の削減は、2022 年第 2 四半期の Chrome マイナー リリースで開始されました。
カスタム文字列をローカルでテストする
カスタム User-Agent 文字列を使用してサイトをテストし、さまざまなデバイスをシミュレートする場合は、--user-agent="Custom string here"
コマンドライン フラグを使用して Chrome を起動します。コマンドライン フラグの詳細については、こちらをご覧ください。
または、Chrome DevTools のデバイス エミュレータを使用することもできます。
サイトのコード内で UA 文字列を変換する
既存の Chrome の user-agent
文字列をクライアントサイドまたはサーバーサイドのコードで処理している場合、その文字列を新しい形式に変換することで互換性をテストできます。オーバーライドと置き換えによりテストすることも、新しいバージョンを作成して並列にテストすることもできます。
クライアント ヒントとクリティカル ヒントのサポート
サーバーに返されるデフォルトのクライアント ヒントは 3 つあります。ブラウザ名とメジャー バージョン、ブラウザがモバイル デバイス上にあるかどうかを示すブール値、オペレーティング システム名です。これらは、Transport Layer Security プロトコル(TLS)handshake の後に送信されます。これらの機能はすでにブラウザで利用可能で、サポートされています。
ただし、サイトのレンダリングに重要な情報を取得する必要がある場合があります。
重要なヒントを最適化する
TLS handshake は、ブラウザとウェブサーバー間の安全な接続を確立するための最初のステップです。Critical-CH レスポンス ヘッダーは、最初のリクエストが Critical Hints なしで送信された場合に、リクエストを直ちに再試行するようブラウザに指示するように設計されています。

Sec-CH-UA-Model
のヒントが 2 回リクエストされます。1 回は Accept-CH
のクライアント ヒントとして、もう 1 回は Critical-CH
の重要なヒントとしてリクエストされます。重要なヒント(Critical-CH
ヘッダー)を最適化するには、このハンドシェイクをインターセプトして、クライアント ヒントのモデルを提供する必要があります。これらの手順は複雑で、高度な知識が必要になる場合があります。
ACCEPT_CH
HTTP/2 フレームと HTTP/3 フレームを TLS ALPS 拡張機能と組み合わせることで、最初の HTTP リクエストに間に合うようにサーバーのクライアント ヒントの設定を配信する接続レベルの最適化が実現します。これらの構成は複雑であるため、本当に重要な情報にのみ使用することをおすすめします。
BoringSSL(OpenSSL のフォーク)は、Chromium で Google の試験運用版機能を使用できるようにします。現時点では、ALPS は BoringSSL にのみ実装されています。
クリティカル ヒントを使用する必要がある場合は、クリティカル ヒントの信頼性と最適化に関するガイドをご覧ください。
よくある質問
Accept-CH
ヘッダーを介して指定されたヒントはいつまで送信されますか?
Accept-CH
ヘッダーを介して指定されたヒントは、ブラウザのセッション中、または別のヒントセットが指定されるまで送信されます。
UA-CH は HTTP/2 と HTTP/3 で動作しますか?
UA-CH は HTTP/2 接続と HTTP/3 接続の両方で動作します。
サブドメイン(および CNAME)で高エントロピー UA-CH にアクセスするには、トップレベル ページの Permissions-Policy
が必要ですか?
リクエスト ヘッダーの高エントロピー UA-CH は、発信元が DNS 側で定義されているかどうかにかかわらず、クロスオリジン リクエストでは制限されます。任意のクロスオリジン サブリソースに対する Permissions-Policy
を介して委任を処理するか、クロスオリジン コンテキストで実行される JavaScript を介して委任を取得する必要があります。
ユーザー エージェントの情報量削減は bot 検出にどのように影響しますか?
Chrome のユーザー エージェント文字列の変更は、ボットが送信することを選択したユーザー エージェント文字列に直接影響しません。
Chrome から送信される情報の削減を反映するために、bot が独自の文字列を更新することもできますが、これは完全に実装の選択に委ねられます。Chrome は引き続き同じ User-Agent 形式を送信します。Chrome の User-Agent 文字列の末尾に独自の識別子を追加する bot は、引き続きそうすることができます。
特定のボットについて懸念がある場合は、オーナーに直接連絡して、User-Agent 文字列を変更する予定があるかどうかを尋ねることをおすすめします。
意見交換とフィードバックの提供
- オリジン トライアル: 過去のオリジン トライアルに関するフィードバックを共有します。
- デモ: User-Agent の情報量削減のデモをお試しください。
- GitHub: UA-CH に関する説明を読み、質問を投稿し、意見交換を行えます。
- デベロッパー サポート: プライバシー サンドボックス デベロッパー サポート リポジトリで質問や意見交換を行えます。
補足説明
- ユーザー プライバシーとデベロッパー エクスペリエンスの改善: ウェブ デベロッパー向けの概要
- UA 文字列から UA-CH に移行する: ウェブ デベロッパー向けチュートリアル
- プライバシー サンドボックスの詳細